― 事業フェーズ別アプローチと成功事例の活用法 ―
介護業界では、プロダクトやサービスの価値が高くても、現場との信頼構築・行政制度・地域性の理解が欠かせません。そのため、営業組織の立ち上げやスケールフェーズにおいては、業界特性に即した営業戦略を設計することが極めて重要です。本記事では、株式会社START WITH WHYが取り組んできた介護領域に特化した営業支援の設計ポイントと、事業責任者が意識すべき「営業チームの成長ドライバー」を整理します。
事業フェーズに応じた営業戦略設計
介護向けプロダクトは、フェーズごとに直面する課題が異なります。今回は、各ステージで重視すべきポイントと支援内容を整理します。
| フェーズ | 主な課題 | 戦略・アプローチ |
|---|---|---|
| プレシード・シード期 | PMF(プロダクト市場適合性)の検証と初期顧客獲得 | ・介護施設・事業者ごとのペルソナと課題構造を明確化・補助金・法改正を踏まえた提案資料を整備・初期顧客との信頼関係構築を目的とした伴走型営業を実施 |
| シリーズA期 | 営業組織の立ち上げとリード獲得 | ・地域ごとのターゲット施設リスト化と優先順位付け・CRM導入・営業プロセス標準化による再現性確保・営業メンバー採用とオンボーディング支援 |
| シリーズB期 | 市場拡大と営業効率の向上 | ・地域密着型営業を全国展開に発展させるスケーラブルモデル構築・データドリブンなKPI管理と改善サイクル導入・カスタマーサクセス部門の立ち上げとアップセル設計 |
| シリーズC期以降 | 収益の安定化と事業基盤強化 | ・高ROI訴求型の法人営業戦略(大手・行政案件中心)・補助金・自治体連携に適合した営業フロー構築・上場準備を見据えた営業プロセスの完全可視化 |
業界特化型の営業支援設計
介護業界の営業は、「地域性」と「信頼性」が鍵です。
一般的なBtoBセールスモデルをそのまま持ち込むと、現場ニーズとのギャップが生じがちです。
介護業界における特性と必要な支援
| 特性 | 営業支援の方向性 |
|---|---|
| 地域密着型営業 | 自治体・包括支援センター・地域医療機関とのネットワーク構築 |
| 法規制・補助金知識 | 制度変更に応じた営業資料更新と補助金活用提案 |
| 現場信頼の重要性 | 施設スタッフの声に寄り添うヒアリング・提案設計 |
弊社の参考事例:
介護・ヘルスケア領域出身のマネージャー(例:エス・エム・エス出身者)の知見を活かし、地域特化の営業モデルを構築。他業界の成功事例を転用しながら、補助金・法規制対応を組み込んだ提案プロセスを設計
営業コンサルティングと営業代行の併用戦略
| 種別 | 主な役割・内容 | 活用フェーズ |
|---|---|---|
| 営業コンサルティング | ・戦略設計・仮説検証・営業フロー構築をリード・定量・定性データをもとにターゲットセグメントを最適化・KPIモニタリングと改善施策の提案 | 立ち上げ期中心(戦略と仮説構築) |
| 営業代行 | ・コンサル設計済みの戦略を現場で実行・CTI・CRMを活用し、短期間で商談・成約を最大化・顧客接点データを蓄積し、フィードバックループを形成 | 拡大期中心(実行+データ収集) |
営業チームとリソースの最適化
- 専門人材のアサイン: 介護領域経験者×営業戦略設計経験者をアサインし、現場理解に基づいた支援を展開
- 組織構築ロードマップ: 営業マネージャー → IS(インサイド)→ FS(フィールド)→ CS(カスタマーサクセス)へ段階的に拡張
- 教育と育成: 営業フローの型化・チェックリスト化・ロールプレイ研修を通じて、スキルを定着化
効果測定と改善サイクル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ活用 | 商談数・成約率・アップセル率などのKPIを定点観測 |
| 改善設計 | 顧客インサイトをもとに提案資料やトークスクリプトを更新 |
| 成果の可視化 | 成果レポートを定期共有し、顧客・社内両面で信頼を強化 |
導入事例・効果事例の活用で営業を加速
(1)事例の作り方
- 選定基準: 地域・規模が異なる複数施設を対象に、多様な成功パターンを収集
- 構成要素: 背景 → 課題 → 解決策 → 成果(定量+定性)→ 顧客の声
- 成果データ: 「業務時間削減率」「稼働効率改善率」などをROI換算で提示
- 公開形態: PDF・Web・動画形式など、営業現場で使いやすいフォーマットに整理
(2)活用方法
- 営業活動での信頼構築: 商談中に類似施設の成功事例を提示し、導入後の姿を具体化
- デジタルマーケティング: 「介護施設 業務効率化」「導入事例」などのキーワードでSEO最適化
- 展示会・セミナー: 成功事例動画・インタビューをパネル展示し、共感訴求を強化
- 社内教育: 新人営業が事例ベースで提案できるように共有
まとめ
介護領域の営業戦略では、「地域理解」「制度理解」「現場理解」の三位一体が不可欠です。
さらに、フェーズ別に最適な戦略・体制・支援パートナーを選定することで、
PMF検証 → 組織構築 → 全国展開 の成長曲線を描くことが可能になるかと思います。

